小児がん・AYA世代のがん医療
静岡県における診療体制と診療機能
小児がん連携病院は小児がん拠点病院と同等の機能を有する類型1、陽子線治療や網膜芽腫治療などの特殊診療機能を有する類型2、長期フォローアップ機能を有する類型3に分かれています。静岡県立静岡がんセンターは3類型全て、当院は類型1および類型3に指定されています。
これら3施設はそれぞれ地域毎の診療を担うという点だけでなく、機能的な特色もあり、互いの特色を生かしながら連携を行っています。
静岡県立こども病院には小児病院ならではの療養環境や集中治療といった特色があります。
静岡県立静岡がんセンターには陽子線治療やAYA世代病棟といった特色があります。
当院は成人診療科との連携も特色の一つです。
小児がんの生存率は概ね80%程度と高く、小児がん経験者は治療終了後も長い人生を送ることが可能です。このため、治療終了後の晩期合併症や治療中・治療集終了後の就労・就学などの問題があります。
就学に関しては、小児がん患者さんは長期間の入院治療によって学習の機会が制限されがちです。長期生存が期待される小児がん患者さんでは、学習の機会の制限はその後の人生に大きな影響を与えます。
3施設とも小中学生は院内学級や訪問教育といった形で義務教育の継続が可能です。
しかし、高校生ではこのような形での学習の機会は確保されず、出席日数の不足などのために留年をしてしまったり、退学を決断してしまったりすることもあります。
こういった事態を避けるため、当院では高校生の患者さんは発症時に在籍高校の教員と面談を行って、進級・卒業の基準を相談し、治療に影響のない範囲で出席日数を最大化できるよう対応を行っています。また、病棟内に患者さんが利用可能なインターネット環境を準備し、高校側の対応が整い次第、遠隔授業にも対応できるように準備しています。
就労に関しては小児・AYA世代がん患者さんでは晩期合併症の問題もあって、より困難になる傾向があります。当院では医療福祉支援センターが就労に関する相談を受けています。
当院では、小児がん連携病院のうち長期フォローアップ機能を有する施設である類型3の指定を受けています。
取り組みとして、治療終了後の晩期合併症に対し長期フォローアップ外来を開設し、晩期合併症のスクリーニング、成人診療科との連携、社会的問題、および妊孕性への対応などを行っています。
また、長期フォローアップにより、小児・AYA世代がん治療によって腎機能が低下した患者さんが妊娠を希望された際、腎臓内科、産婦人科と連携を行って、妊孕性が保てており、かつ安全に妊娠を継続できることを確認し、実際にその後生児を得た例もあります。これらは施設内にがん治療以外を行う成人診療科を有している当院ならではの特色です。小児がん・AYA世代がん患者さんは治療によって妊孕性を喪失する可能性があり、可能な患者では妊孕性温存が重要となります。妊孕性温存にあたっては「しずおか がんと生殖医療を考えるネットワーク(SOFnet)」と協力を行っています。
当院はSOFnetの参加施設でもあるため、自施設内で妊孕性温存療法が実施可能であり、精子保存や卵子保存を行っています。